2019年12月3日に経済協力開発機構(OECD)が3年ぶりに最新のPISA成績(国際学力調査)を発表しました。OECDが2000年から3年ごとに世界各国の15歳の生徒たちに対し、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーという三科目のテストを行っています。今回、79ヶ国と地域からの60万名の生徒がこのテストを受けました。
中国の生徒が世界一位を取りました。
前回のテストでは、シンガポールが世界1位、日本が世界2位、中国(北京、上海、江蘇省、広東省)が世界十位でしたが、今回、中国は北京、上海、江蘇省、浙江省からの361校の12058名の生徒が学力テストを受け、三科目の平均成績は、555点(読解力)、591点(数学的リテラシー)、590点(科学的リテラシー)、いずれも世界一位となりました。のみならず、PISAの調査報告によると、中国では、成績が最下位の10%の生徒であっても、読解力の成績が世界平均成績を越えました。
一方、日本は今回、読解力第15位、数学的リテラシー第6位、科学的リテラシー第5位、となり、読解力は2012年に最高位の第4位になった以降、2回連続で下がりました。それに対し、日本教育業界は、日本の生徒がコンピューターテストや論述問題に馴染まないなど様々な意見を表し、ゆとり教育の失敗に原因があるという声も上がりました。
日本が反省していると同時に、中国も世界一位の成績に対し、違う意見が現れます。
北京、上海、江蘇省、浙江省のような教育が発達している地域が中国全国の教育水準を代表できないのではないでしょうか。都市部と農村部、各地方、学校の実力など、それぞれ違います。中国教育部基礎教育品質観測センターの辛涛副主任が「PISA2018の三科目がいずれも世界一位を取るのは、我が国31の省・市・自治区全体として世界一位が取れるわけではないです」と述べました。教育品質の差異が北京、上海、江蘇省、浙江省の中でも現れています。
さらに、世界一位の裏側に、学業の負担が重い現状があります。北京、上海、江蘇省、浙江省の生徒の校内平均勉強時間が31.8時間/週で、テスト対象国・地域のうち、4位となりますが、塾を通う時間を加えると、実際の時間は上記の数値を大幅に超えるでしょう。
長時間の勉強が勉強効率の低下ももたらします。北京、上海、江蘇省、浙江省の生徒は読解、数学及び科学の勉強効率がそれぞれ119.8点/時間、118.0点/時間、107.7点/時間で、テスト対象国・地域のうち、それぞれ第44位、第46位、第54位でした。
PISAは本当に基礎教育レベルを反映できますか?
PISAは世界中で影響を与えている基礎教育評価項目となっていますが、それに対し疑問を持っている人が少なくありません。2014年に、約80名の教授及び関連専門家が連名で、イギリスの大手新聞「ガーディアン」で、PISAを停止させると呼びかけました。PISAが現代社会に必要不可欠なスギルを評価しているとは限らないのみならず、体育、芸術、道徳など定量化できないことがテストに無視されているという意見があります。
中国21世纪教育研究院の熊丙奇副院長が「PISAがあくまでも受験の結果で、成績がある国の実際の基礎教育水準を反映できないかもしれません。PISA成績で基礎教育を評価すると、基礎教育を誤った方向に導くでしょう」と述べました。