九州大学カイコ研究チームは「KAICO株式会社」と共同でワクチン候補タンパク質開発に成功しました。また、九州大学グリーンファルマ研究所は、既承認薬からの治療薬探索で3種までの絞り込みに成功し、年内実用を目指しています。
■九大カイコ研究チーム ワクチンの候補タンパク質開発に成功
九州大学農学研究院は、100年以上カイコの飼育研究を続ける世界最先端のカイコ研究拠点です。日下部宜宏教授は、九大で飼育している約450種のカイコの中に、体内でワクチンの原料となるタンパク質を大量につくってくれる種があることを発見しました。2018年には福岡市にカイコを利用した組換えタンパク質発現の技術等、本学の技術をもとに九大発ベンチャーとして「KAICO株式会社」が創業され、現在は同社と共同でパンデミック時に役立つワクチンを研究開発しています。
そんな中、新型コロナ問題が起こり、このほど、ワクチン候補となるタンパク質の開発に成功しました。新型コロナウイルスの表面にはスパイクのような形をしたタンパク質があり、これがヒトの細胞の表面にあるタンパク質と結合して感染すると考えられていますが、このスパイク形タンパク質と同じ構造のタンパク質を人工的につくることに成功したものです。
今後、開発中のワクチンの基本性能を薬学研究院(植田教授、西田教授)との共同研究により評価し、高性能ワクチンを作る研究を加速すると共に、製薬企業などと提携しての臨床試験を目指していきます。カイコによるワクチン開発は、より安価に大量生産できる可能性が高く、途上国への貢献も期待されます。
■グリーンファルマ研究所 既承認薬からの治療薬探索で3種まで絞り込み
また、本学薬学研究院附属グリーンファルマ研究所の西田基宏教授のチームは、新型コロナ治療薬を既承認薬から探索する研究を進めていますが、3種までの絞り込みに成功、年内の実用を目指しています。グリーンファルマ研究所は、2015年に“患者さんと地球環境に優しい創薬”をめざしてスタートした研究所で、薬のない病気で苦しむ患者さんに、既に承認されている他の病気の薬から探索して早く届ける“エコファーマ”をひとつの理念としています。